《九重墨花》我が家には『ハグの刑』があった
「普通の親じゃなくて、母さんで良かった」
私は、いわゆる「普通のお母さん」ではなかったと思う。
母子家庭だったこともあって、息子たちとは少し変わった関係だった。
小さい頃は、そりゃもう怖い母親だった。
気分で叱る。
イラついては叱る。
親としての威厳を、フル活用して乱用して。
でも、息子たちが中学生くらいになった頃から、少しずつ関係が変わっていった。
頭ごなしに怒るのではなく、まず俺たちの話を聞いて欲しい。
そう懇願されたのだ!
私は変わった!
「なんでそう思ったの?」
「あなたはどうしたいの?」
でも。叱らないでいると
つけ上がる息子達。
これはなんとかしなきゃ。
約束を守りつつ、
ギャフンと言わせたい。
そんな叱り方、、、ある?
そこで思いついたのが
「ハグの刑」
悪い事をしたら私を30秒間抱きしめる。力いっぱい。手を抜いたら初めからやり直し。
これがめちゃくちゃ効く!
恥ずかしい年頃だから
ハグはやりたくない。
長男は何度私を抱きしめただろう。
次男はそれをみて
ハグをしない様に
学んで行った。
次男からのハグの思い出が
、、、無い。(笑)
そして私は、親なら子どもに話さないような自分の悩みまで、息子たちに話していた。
「ねぇ、あんたならどう思う?」
なんて、逆に相談することもあった。
だからなのか、息子たちとは友達みたいな関係になった。
一緒に飲みに行く。
息子の友達とも仲良くする。
歴代の彼女たちとも仲がいいままで、
息子と別れたあとも遊んでいる。
長男の彼女たちからは、
「彼は究極のマザコンですよ(笑)」
なんて言われていた。
でも、みんな必ずこう続けた。
「褒め言葉ですよ」
長男自身も、私が元カノたちと会っていても嫌がるどころか、微笑ましそうに見ている。
次男は普段、私とはあまり遊ばない。
「母ちゃんと遊ぶの、まだ恥ずかしいんか?」
と笑ってしまうくらい(笑)
ところが、たまに突然、
「今度のそっちの休みに、ご飯食べ行く?」
なんて言ってくる。
今年の夏、私が大きな変化を迎えた翌日にも、次男からご飯に誘ってもらった。
たった一言だったけれど、あの時は嬉しかった。
そして、つい最近。
長男に鍵を返す連絡をした。
「今日、出先の帰りに返しに行くね。ポストに入れておくから」
会うつもりはなかった。
すると、
「明日の夜、もしかしたら日曜になるかもだけど、想ちゃんと遊びに行くわ!」
と返ってきた。
私は、ちょっと期待してしまった。
「孫に会えるかも」って。
そんな自分に、ちょっと苦笑いした。
でも、いいじゃないか。
親子なんだから。
息子たちが結婚しても、家庭を持っても、親子の関係までなくなるわけじゃない。
嫁には嫁との関係がある。
息子には息子の家庭がある。
そして私には、私と息子たちの関係がある。
それは誰かと比べるものでもないし、誰かに譲るものでもない。
そんなことを考えていたら、ふと思い出した。
息子が20代の頃に言った言葉。
「俺の親が、普通の親でなくて、
母さんで良かったわ」
あの言葉は、今でも私の宝物だ。
普通じゃなくてもいい。
完璧な母親じゃなくてもいい。
子どもが大人になったあと、
「あの母ちゃんで良かった」
と思ってもらえたなら。
私はそれだけで、十分幸せな母親だったと思う。
そして今日も私は、ちょっと変わった母ちゃんのまま生きていく。
普通じゃないって、案外
いいもんだ!

