乙――しなやかに生きる人が、なぜ人に合わせすぎて疲れるのか 四柱推命で読む「あなたという自然」②
四柱推命では、
その人自身を表す重要な要素の一つとして、
日干(にっかん)
を見ます。
日干には、
甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸。
十種類があります。
前回は、
大きな樹木にたとえられる、
甲(きのえ)
についてお話ししました。
第二回は、
同じ「木」の性質を持ちながら、
甲とは少し違う姿を持つ、
乙(きのと)
です。
乙は、草花や蔓
乙は、
五行では「木」。
けれど、
甲が大きな樹木なら、
乙は、
草。
花。
蔓。
細い枝。
そんな、
しなやかな植物
にたとえられます。
大きな木のように、
一本の幹をまっすぐ伸ばしていくのではありません。
周囲を見ながら、
光のあるほうへ伸びる。
何かにつかまりながら、
少しずつ上へ向かう。
風が吹けば、
いったん身をしならせる。
けれど、
風が止めば、
また元の場所へ戻っていく。
乙には、
そんな柔らかさがあります。
乙の人は、周囲をよく見ている
乙の人は、
人の気持ちや、
その場の空気を読むことが得意なことがあります。
今、
何を言えばいいだろう。
誰が困っているだろう。
ここでは、
どんな振る舞いが自然だろう。
そんなことを、
意識する前に感じ取っている人もいるでしょう。
ですから、
人間関係では、
調整役になったり、
間に入ったり、
相手に合わせたりすることができます。
甲のように、
「私はこうです」
とまっすぐ押し出すより、
相手を見ながら、
少しずつ距離を縮めていく。
この柔らかさは、
乙の大きな才能です。
けれど、
この才能には、
少し注意が必要です。
合わせられる人ほど、合わせすぎる
乙の人は、
合わせることができます。
だからこそ、
合わせなくてもいいところまで、合わせてしまう
ことがあります。
相手が機嫌を悪くしそうだから、
自分の意見を引っ込める。
その場が丸く収まるなら、
自分が少し我慢する。
「別に私はいいですよ」
と言いながら、
本当は少し嫌だった。
そんなことが、
少しずつ積み重なっていく。
周囲から見れば、
穏やかな人。
優しい人。
感じのいい人。
けれど、
本人の中では、
いつの間にか、
こんな感覚が生まれることがあります。
「私は、本当はどうしたいんだろう」
人に合わせる力があることと、
自分を持っていないことは、
同じではありません。
けれど、
人の気持ちを先に読み続けていると、
自分の気持ちが、
だんだん後ろへ下がってしまうことがあります。
しなやかさは、弱さではない
草花は、
大きな木ほど強そうには見えません。
踏まれれば倒れることもあります。
強い風が吹けば、
地面すれすれまで曲がることもあります。
けれど、
曲がるからこそ、
折れずに済むことがあります。
乙の強さは、
力で押し返すことではありません。
状況を見て、
形を変える。
相手を見て、
言い方を変える。
必要なら、
いったん引く。
そして、
また伸びていく。
そんな、
柔らかな生命力
です。
ですから、
「私は強く言えないから弱い」
「もっと堂々としなければ」
と、
無理に甲のようになろうとする必要はありません。
乙には、
乙の強さがあります。
ただし、
どこまでも相手に巻きついていけば、
今度は、
自分自身がどこにいるのか、
分からなくなることがあります。
蔓には、伸びていく方向が必要
乙は、
蔓植物にもたとえられます。
蔓は、
何かにつかまりながら、
上へ伸びていきます。
この象徴は、
乙の人間関係を考えるときにも、
とても興味深いものです。
乙の人は、
人との縁によって、
大きく伸びることがあります。
良い先生。
良い仲間。
良い職場。
良いパートナー。
そうした存在と出会うことで、
自分一人では届かなかった場所まで、
成長していくことができます。
けれど、
つかまる相手を間違えると、
その人の世界に巻き込まれてしまうこともあります。
誰と一緒にいるか。
どんな場所に身を置くか。
乙にとって、
それはとても大切です。
同じ乙でも、すべて同じではない
ここで、
四柱推命の面白さがあります。
同じ乙でも、
春に生まれた乙と、
冬に生まれた乙では、
同じ読み方にはなりません。
春なら、
これから伸びていく若い草花かもしれません。
夏なら、
強い日差しの中で、
水を求めている植物かもしれない。
秋なら、
花を終え、
実を結ぼうとしている姿かもしれません。
冬なら、
地上では静かでも、
土の中で春を待っている植物かもしれません。
さらに、
命式の中に、
水があるのか。
太陽のような火があるのか。
根を張れる土があるのか。
刃物のような金が強いのか。
その組み合わせによって、
同じ乙でも、
姿は大きく変わります。
だから、
「乙の人は優しい」
「乙の人は協調性がある」
という一言だけでは、
本当のところは見えてきません。
あなたは、何に向かって伸びていますか
乙の人に、
一つ問いかけてみたいと思います。
あなたは今、何に向かって伸びていますか。
誰かに嫌われないためでしょうか。
周囲から認めてもらうためでしょうか。
期待に応えるためでしょうか。
それとも、
自分が本当に見たい光へ向かって、
伸びているでしょうか。
草花は、
周囲に合わせながら生きています。
雨を受ける。
風に揺れる。
太陽の方向へ伸びる。
けれど、
すべてを周囲に決めてもらっているわけではありません。
その植物自身の中にも、
「こちらへ伸びていく」
という生命の力があります。
人に合わせられることは、
乙の美しさです。
けれど、
人に合わせるために、
自分自身を失う必要はありません。
四柱推命を見ると、
その人がどんな環境で力を発揮しやすいのか、
どんな人との関係で伸びやすいのか、
どこで無理をしやすいのか、
そんなことも少しずつ見えてきます。
「どうして私は、
いつも人に合わせてしまうのだろう」
「なぜか、
人間関係で疲れてしまう」
そんな悩みも、
単なる性格の弱さではなく、
自分が持っている性質の使い方
という視点から見ると、
違った景色が見えてくるかもしれません。
あなたの命式の中で、
乙は、
どんな場所に生えていますか。
どんな光を求め、
何につかまり、
どこへ向かって伸びようとしているのでしょう。
そこを丁寧に見ていくと、
「人に合わせる私」ではなく、
「しなやかに、自分の道を伸びていく私」
が見えてくるかもしれません。
次回は、
太陽のような明るい火にたとえられる、
丙(ひのえ)
について見ていきます。

